ゴミとお宝
なんともまあ、ほんとに物にかこまれて生きているよね。
夫の海外転勤が決まったので家の中の片付けをはじめた。結婚して以来引っ越しをしたことがないので約23年もの間に蓄積された物たちがこの家に詰め込まれているというわけだ。
子どもはいないが二人とも趣味を持っているのでそれぞれが物を買い込んでいる。
夫はバイク用品や自転車用品。私は手芸用品。
ほんとにもう、どうしたらいいのかわからない。
ひとまず本やCDから手をつけてフリマアプリに出品している。
安く出せばすぐ片付くんだろうけど、ついつい相場価格なんてものを調べてしまう。好きだったミュージシャンの昔のCDが今ではamazonプライム会員だったら無料で聴き放題になっているのを知ってびっくりする。勢いでゴミ袋につっこんだ。
なんでこんなにCD買っていたんだろ。
エレクターシェルフに並べて悦にいっていた時期があったんだよ。
ああ、嫌だ。
今じゃ埃をかぶっていてさ、フリマアプリに出品する前にめっちゃ頑張ってふいた。セスキ炭酸ソーダをしゅっしゅって含ませた古タオルでさ。CDのプラスチックケースの溝をね、そこに埃がたまって汚くなってたからさ、最後のご奉公みたいな気持ちできれいにしたの。
みんなエレクターシェルフがいけないんだよ。
これがカッコよかった時代があったんだよ。
限定で買ったぬいぐるみ人形もあってね、部屋の天袋から出てきたの。
段ボールの外箱ごとね。
開けてみたら飾ってもいないのにシミが浮き出ていてね。
ああ~嫌だ。
大きいから飾るところに困って、あと汚れるのもイヤでしまいっぱなしにしていたのね。限定品を買ったことで満足してしまったのね。そうして天袋なんて、めったに開けないところにしまい込んで忘れていたのね。
忘れたくてそこに入れたのかもしれないね。
こわいわ。
しまうところがあるってこわいわ。
今、引っ越すにあたって闇の封印を解いているところよ。
この家を売るわけでもないし、貸すわけでもないからそのまんまにしておいても別にいいんだけどさ、新しい場所に持って行かないものって言うなれば「必要ないもの」なんだよね。
ヤバいわ。
うちは「必要ないもの」だらけなんじゃね?
って気持ちが湧き上がってくる。
見てると「この本は捨てられない!」って思うんだけどそれを海外の引っ越し先にまで持って行くかって言ったら「……」ってなっちゃうんだよね。
私が今死んだら片づける人たちにほんと申し訳ないわ。
手芸用品は友達に譲るように夫に伝えてある。
もしも私が死んだら。
これはよく手芸友だちと話してることで、「アンティークレースとかフィードサックのはぎれなんて知らない人からすればゴミだよね。私が死んだら絶対家族に捨てられる」
死んだ後のことなんて心配してもしょうがないんだけど私たちにとっては「お宝」なの。
そんなお宝もため込みすぎて生きているうちに使い切れるのか、という状況になってしまっているが。
だってもう50を過ぎたんだよ。
あと生きて何年なの?って年になっちゃったんだよ。
ほんとヤバイの。
今回の引っ越しは元気なうちに片づけをすませておけっていう、いいタイミングでもあるんだよね。
と言いつつ、趣味のものにあふれた自分の部屋の中に入るともうどうしていいのかどこから手を付けたらいいのか呆然とする。
大切なものばかりのはずなのにありすぎていっそのこと全部なくてもいいんじゃない?ってどこか思っていて、もう買わない、絶対買わないって反省しきりよ。
さようなら!
私の宝物、大切な、大事にしてきた物たち。
さようなら!
ゴミ袋へ。
さようなら!
……。